1986 年 27 巻 8 号 p. 1094-1104
原発性肝細胞癌(HCC)破裂による腹腔内出血7例に対し,緊急肝動脈塞栓療法(緊急TAE療法)を施行した.全例止血に成功し,5例を救命した.うち2例は,後に肝切除術にて,腫瘍摘出することができた.
7例中4例に造影剤の血管外漏出(extravasation)が証明され,出血の責任血管は動脈であり,門脈の関与はなかった.
破裂したHCCは,肝外に突出する肝外発育型を呈していることが特徴で,これらのHCCの中には,孤立性,小型の癌も含まれており,HCCの腹腔内出血に対する緊急TAE療法の有用性は高く,救命手段として確立されるべきであると考えられた.
予後を左右する因子は,短期的にはDIC,中期的には,門脈浸潤,輸血後肝炎,長期的には大網の癒着による側副血行路の発達であると考えられた.