28 巻 (1987) 2 号 p. 164-170
急性肝不全にて血中に増加する毒性物質の除去を図る為に,polyacrylonitrile (PAN)膜活性炭潅流法という新しい人工肝補助装置を開発した.PAN膜により中分子量以下の物質を濾過し,濾過液のみを裸の活性炭により吸着して体内に戻す閉鎖循環回路であり,PAN膜透析と異なり水電解質の変動がない.劇症肝炎5症例,急性薬物中毒7症例に臨床応用し,成績を検討した.劇症肝炎はウイルス性4例,薬剤性1例であり,急性型4例,亜急性型1例で,治療開始時の脳症はII度~IV度であった.結果は4例は死亡し,生存例は1例のみであった.剖検肝は全例広汎性肝壊死を呈していた.急性薬物中毒はパラコート中毒6例,アモバルビタール中毒1例であり,生存例はそれぞれ1例ずつであった.活性炭での中分子量物質およびパラコートの吸着能は良好で,長時間安全に潅流できたが,劇症肝炎,薬物中毒ともに,重大な合併症により死亡したと考えられた.