肝臓
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肝真菌感染症の臨床病理学的検討
山田 伸次
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1987 年 28 巻 6 号 p. 755-765

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抄録

肝臓の真菌感染を,最近10年間(1972~1981)の日本病理剖検輯報により調査した.全剖検例に対する頻度は0.19%(521例)であった.これは全真菌感染の7.4%を占め,全身性感染の一部分症としてみられるものが多く,なかでもカンジダ症が最も多かった.教室の肝真菌症35剖検例について臨床病理学的に検討した.臨床的に顕性黄疸,GOT, GPTの異常高値を示したものが多かった.肉眼的には,肝被膜炎および多発性の結節性病変としてみられ,肝表面から病巣が観察されるものが約半数(51.4%)を占めた.病巣は組織反応によって凝固壊死型(77.1%)と膿瘍形成型(11.4%)に大別された.そして宿主の免疫不全状態が重篤なものは凝固壊死型に,宿主の抵抗力が残存しているものは膿瘍形成型になると推定した.肝への感染経路,病変初発部位についての検討結果を述べ,かつ肝硬変に肝真菌感染が少ない事実を指摘し,その理由について考察した.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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