妊娠中期に発症した診断困難な肝不全の1例を経験したので,その剖検所見とあわせて報告する.症例は20歳女性,一回経産婦.妊娠21週に感冒様症状で発症し,23週に黄疸を認めた.その後,DICおよび急性肝不全をはじめとする多臓器不全におちいり急速に死の転帰をとったことより,臨床的には急性妊娠性脂肪肝が考えられた.剖検において,肝は出血性梗塞の像を主体としており,急性妊娠性脂肪肝に特徴的とされるmicrovesicular fatは,一部に認められたに過ぎなかった.肝以外の臓器では,腎,肺,副腎,骨髄に多発性に梗塞を認め,腎糸球体,肺,副腎の小血管にフィブリン血栓を認めたことよりDICの所見と考えられた.急性妊娠性脂肪肝やDICの病態にShwartzman反応の関与が論じられているが,本症例はこれらの関連を考えるうえで興味ある症例と思われた.