肝臓
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注射針刺傷事故後の非A非B型急性肝炎の検討
宜保 行雄清沢 研道古田 清中村 信植村 一幸古田 精市
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1988 年 29 巻 1 号 p. 7-15

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抄録

過去12年間に発生した非輸血後急性肝炎452例の感染経路に関する検討を行なった結果,非A非B型急性肝炎(NANB-AVH)209例中5症例(2.3%)は血液汚染注射針の刺傷事故後に発症した例であった.これらNANB-AVHの5人とその感染源と考えられる5人について検討を行なった.(1)5例のNANB-AVHの潜伏期は31~51日で,2例に黄疸がみられ,3例はs-GPTの異常が6カ月以上持続した.組織学的には全例急性肝炎の所見を呈した.(2)1例は刺傷事故によりHBVとNANB型肝炎ウイルス(NANB-V)の重感染をうけた可能性が考えられ,HBIGの投与によりHBV感染はブロックされ,NANB-AVHのみ発症した.(3)1例に刺傷事故後,市販のガンマグロブリン製剤を投与したがNANB-AVHを発症した.(4)感染源の5人は全員s-GPTの異常があり,NANB-Vのキャリア状態にあったと考えられた.NANB-Vキャリア血液の汚染針の刺傷事故により,NANB-AVHが発症することを報告した.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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