1988 年 29 巻 12 号 p. 1627-1632
急性肝不全を発症し重篤な病態を呈したHepatitis B virus (HBV) carrier 7例を経験した.Hepatitis delta virus, Hepatitis A virus, Epstein Barr virus, cytomegalo virusの重感染例はなく,多量飲酒および薬剤による急性肝不全発症例もみられなかった.
輸血歴のない4例では3例で発症時HBV-DNA-polymerase (HBV-DNA-p)あるいはHBV-DNAが陽性であり,HBVのactive replicationが急性肝不全の発症に関与していると考えられた.輸血歴を有する3例ではHBV-DNA-p, HBV-DNA, IgM HBc抗体陽性例はなく,非A非B型肝炎ウイルスの重感染の可能性が推察された.
全例にグルカゴン-インスリン療法および血漿交換療法を施行したが救命例は1例のみであった.acute hepatic failure on chronic liver disease (acute on chronic)と考えられた4例では生存例はなく,acute on chronicの予後は不良であると考えられた.