1988 年 29 巻 3 号 p. 329-335
肝の代謝調節や肝再生にcyclic AMPが重要な役割を演じている事はよく知られている.本論文ではcyclic AMPの誘導体であるdibutyryl cyclic AMPとグルカゴンのD-galactosamine障害肝におよぼす影響を血中グルコース濃度,肝組織グリコーゲン量,糖代謝系の酵素活性に関して比較検討した.
dibutyryl cyclic AMP,グルカゴンの両者は糖代謝面で類似の作用を示した.
dibutyryl cyclic AMPはグルカゴンに比べて糖新生(gluconeogenesis)を促進させたが,グリコーゲン分解作用(glycogenolysis)は弱かった.また,血中グルコース濃度を上昇させ,lipolysis促進作用は弱い事が示され,以上のことからD-galactosamine障害肝における,dibutyryl cyclic AMPとグルカゴンの影響はやや異なると考えられ,dibutyryl cyclic AMPの方がグルカゴンに比べて,より強く肝細胞障害時のエネルギー代謝障害を改善することが示唆された.