1988 年 29 巻 3 号 p. 336-340
D-galactosamine (GalN)投与家兎を用いて,急性肝不全時の腎アラキドン酸代謝の変動について検討した.GalN (1g/kg)投与後24時間尿中Prostaglandin E2 (PGE2)排泄量は,非投与群に比し増加していた.血中norepinephrine, epinephrine濃度はGalN投与群で上昇しており,これらのvasocostrictorに拮抗した腎でのPGE2合成の亢進と考えられた.しかしGalN投与24時間後には,腎皮質組織中のPGE2含量は低下しており,この時点では既に,PGE2産生能は低下していることが示唆された.組織内脂肪酸組成の分析では,腎皮質アラキドン酸含量の低下を認めた.このアラキドン酸含量の低下は,腎プロスタグランディン合成亢進によるアラキドン酸の消耗および肝からのアラキドン酸供給の低下によるものと推測された.