肝臓
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漢方薬の長期服用中に発生し,中心静脈閉塞を示した非硬変性門脈圧亢進症の1例
野ツ俣 和夫両林 英之大溝 了庸古沢 明彦野田 八嗣鵜浦 雅志田中 延善小林 健一服部 信松井 修中沼 安二太田 五六泉 良平
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1988 年 29 巻 3 号 p. 394-399

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抄録

漢方薬内のpyrrolizidine alkaloid服用中に発症した非硬変性門脈圧亢進症の1例を報告する.37歳女性で,26歳時より漢方薬を常用していた.昭和59年8月頃より下腿浮腫,腹水が出現し昭和60年2月3日入院.肝機能,肝形態はほぼ正常であったが,高度の食道胃静脈瘤,臍静脈拡張等の側副血行路発達を呈する門脈圧亢進症が見られた.肝生検では中心静脈の閉塞がみられ,その他に周囲類洞の軽度の拡張,門脈域の軽度の線維化が見られた.中心静脈の閉塞が門脈圧亢進症の発症に重要と考えられた.本漢方薬のタクゴ内にはpyrrolizidine alkaloidが含まれており本症例は10年間に計約2,000mgのpyrrolizidine alkaloidを服用していたことにより,中心静脈の閉塞に重要な役割を果たしたと考えられた.服用中止にて約1年経過するも門脈圧亢進所見は軽快せず慢性期に移行したものと思われた.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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