29 巻 (1988) 7 号 p. 938-941
SLE治療中,特発性門脈圧亢進症(以下IPH)と診断しえた症例を報告する.症例は46歳女性,昭和58年SLEと診断,加療中であったが,昭和61年8月食道静脈瘤破裂,同年10月入院.高γ-グロブリン血症,汎血球減少,各種自己抗体陽性を認め,腹腔動脈造影で巨脾を呈し,門脈造影では肝硬変所見を欠き肝静脈楔入圧は13cmH2Oであった.以上よりSLEを合併したIPHと診断し,経腹的食道離断,脾摘術施行.筋組織所見では,肝硬変所見はなくグリソン鞘への細胞浸潤,軽度の門脈周囲の線維化,限界板破壊を認め慢性活動性肝炎の合併も認められた.本症例に関しては,SLE, IPHと共にルポイダ肝炎の合併も考慮され,IPHの成因としてはウイルス肝炎説と自己免疫疾患説の2者が考えられ,単独の説で解析することは困難と思われた.更に臨床所見上では短期間に門脈圧亢進状態を呈しており,IPHによる圧亢進の病態を考えるうえで興味ある症例であった.