肝臓
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在日韓国・朝鮮人の肝癌症例-対照研究
辺 秀俊李 輝雄生方 享司日山 興彦大島 明
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1988 年 29 巻 9 号 p. 1215-1221

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抄録

在日韓国・朝鮮人の肝癌とB型肝炎ウイルス(HBV),飲酒,喫煙との関連を明らかにするため,症例-対照研究をおこなった.症例群は116例の初診の肝細胞癌患者で,それぞれの患者と年齢,性,入院年,健康保険区分がマッチした者を入院患者の中から1:2で無作為に選んだ.その結果,HBs抗原陽性者の肝癌リスクは19.58で,飲酒歴を補正した相対危険でも男で11.35,女で15.26と有意に高くなった.喫煙は肝癌の危険因子とはならなかったが,毎日飲酒の相対危険は1.99と有意に高く,また男で飲酒量と相対危険の間に正の相関関係がみられた.一方,寄与危険度は男では飲酒56.5%,HBs抗原23.1%,喫煙13.3%と飲酒の役割が大きく,女ではHBs抗原41.4%,飲酒7.0%でHBVの感染の役割が大きいことが推定された.さらに,HBs抗原陽性者で多量飲酒が重なると,肝癌リスクが上昇することが推定された.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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