30 巻 (1989) 10 号 p. 1481-1490
肝再生調節機構を解明するため,ヒト初代培養肝細胞のDNA合成を指標に検討した.肝細胞は小肝組織片から灌流と振盪の2段階法によって分離した.肝実質細胞は血清無添加培養液中で3週間単層を維持した.肝実質細胞はインスリンと表皮増殖因子(EGF)に応答して増殖した.L-プロリンはこれらの2つのホルモンによって促進される肝細胞のDNA合成に不可欠であった.コラーゲン合成の特異的な阻害剤であるシスーヒドロキシプロリンはDNA合成を強く抑制した.このことから,肝細胞の増殖には内因性のコラーゲン合成が必要であることが示唆された.肝実質細胞と肝非実質細胞をco-cultureすると,L-プロリン,インスリン及びEGFは肝非実質細胞の増殖を促進せずむしろ抑制する傾向が見られた.即ち,これらの2つのタイプの細胞の増殖の間には相反的な関係があることが示唆された.これらの結果は,肝再生機構や肝線維化の機序を解明するのに有用であると考えられた.