肝臓
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後腹膜奇形腫を合併した原発性肝カルチノイドの1例
菅谷 洋子菅谷 仁飯島 誠湯村 和博藤原 弘道伊吹 泰一久内 徹原田 尚
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1989 年 30 巻 11 号 p. 1629-1634

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抄録

肝カルチノイドと後腹膜奇形腫とを合併した極めてまれな1例を報告する.症例は54歳の女性.全身倦怠感・腹部膨満感を主訴として肝精査目的にて入院した.入院時肝は著明に腫大し,画像診断では肝内・肝外に性状を異にする二つの腫瘤を認め,肝内腫瘤からの吸引細胞診ではClass Vであったが,原発巣の同定はできず,入院6カ月後肝内の腫瘍破裂で死亡した.なお,経過中明らかな内分泌症状は認められなかった.剖検上,肝は3,850gで肝右葉に出血・壊死の混在する約19cm大の腫瘤と左葉に転移巣を認めた.さらに右葉の外側に肝と分離した後腹膜原発と考えられるdermoid cystを認め,内部に毛髪・石灰化物質が混在していた.肝腫瘍については他臓器には明らかな原発巣を認め得ず,肝原発カルチノイドと診断された.一方,後腹膜腫瘍は,上皮成分・平滑筋等を含む良性奇形腫であった.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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