1989 年 30 巻 2 号 p. 217-223
ヒト正常肝生検組織の凍結切片をTriton X-100, nucleaseで処理し,3種の異なる分子量を持つCKに対する抗CK抗体,(1) MA-902; CK No. 8, (2) RPN. 1160; CK No. 18, (3) CAM5.2; CK No. 8, 18 & 19を用い免疫電顕を施行し,ヒト正常肝細胞におけるIFの異質性について,免疫組織化学的に検討した.この方法により,TEMで肝CSが明瞭に観察でき,細胞境界部および毛細胆管周囲に密な網目構造が存在した.細胞質内には直径約10nmの均一かつ平滑なIFが多数存在していた.免疫電顕の検討で,RPN. 1160では一部のIFにのみ,またMA-902やCAM5.2ではほぼ全てのIFに金粒子が標識され,MA-902とRPN. 1160との二重染色免疫電顕で2種の抗体の両方と反応するIFが観察された.以上の成績から,ヒト正常肝細胞にはCK No. 18を持たないIFも存在し,免疫学的に異なる少なくとも2種類のIFが存在することが示唆され,また単一のIFに2種のCKポリペプチドが存在することが証明された.