30 巻 (1989) 4 号 p. 484-491
症例は76歳,男性.肝細胞癌の診断で肝右葉後区域部分切除術を施行し,約1年後に術後再発を認めtranscatheter arterial embolization (TAE)を繰り返した.第4回TAE(第2回Lipiodol-TAE: Lip-TAE)施行約5時間後より意識障害が出現し,翌日の脳CTで,脳転移及び転移巣内にlipiodol ultra-fluide (Lipiodol)沈着が疑われた.約10日後(術後3年4ヵ月後),患者は呼吸不全にて死亡した.剖検により,意識障害は脳転移部位の出血および腫瘍細胞とLipiodolによる多発性脳梗塞が原因と考えちれた.また直接死因は間質性肺炎と診断され,この原因もLipiodolとの関係が示唆された.本症例のLipiodolの大循環系への流入原因は,下横隔膜動脈-肺静脈吻合が存在したためと考えられた.
下横隔膜動脈からのLip-TAEに際しては,この吻合の有無に注意するとともに,肝動脈へのLipiodol注入量も必要最小限に留めるべきと考えられた.