急性肝不全で発症した成人T細胞白血病の1剖検例を報告した.症例は58歳,男性.急性肝炎の診断で札幌逓信病院に入院したが,白血球の増多とともに意識障害が出現し,当院に入院した.入院時肝性昏睡V度,総ビリルビン4.8mg/dl,GOT 2,093IU/L,GPT 814IU/L,LDH 6,580IU/L,白血球は43,600/mm3でその41%が核に切れ込みを持つ異型リンパ球で,HBs抗原およびATLA抗体が陽性であった.直ちに血漿交換,高気圧酸素療法,グルカゴン.インスリン療法を開始し,さらにVincristineを併用したところ白血球の減少とともに第8病日には意識は清明となったが,第45病日に敗血症で死亡した.剖検では肝は乙型肝硬変の像を呈し,門脈域に腫瘍細胞の浸潤が認められた.