肝臓
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原発性胆汁性肝硬変症における高IgM血症の成因について
井出 達也
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1990 年 31 巻 11 号 p. 1315-1323

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抄録

原発性胆汁性肝硬変症(PBC)における高IgM血症の成因を検討した.Monomer型IgMの増加はなく,血中総IgM値はpolymer型IgM値と正の相関を示した.血中secretory IgM (sIgM) levelの増加も認めたが,血中総IgM値と強い相関はなく,疾患特異性もなかった.肝内門脈域浸潤細胞ではIgM保有細胞が有意に多かった.電顕によるKupffer細胞の観察では病初期からの貪食能低下の所見が得られた.IgMクラス抗Lipid A抗体はPBCで最も増加していた.以上より,高IgM血症を来たす原因として,monomer型IgMの関与は否定的で,胆管破壊に伴うsIgMの排泄障害によるとも考えられなかった.血中IgMの産生部位としては肝局所が重要であり,Kupffer細胞の機能異常に伴う腸管内細菌性抗原の処理能の低下が,細菌性抗原に対する抗Lipid A抗体をはじめとしたIgMクラスの抗体産生を誘導していることが示唆され,このことが高IgM血症の一因を成すと考えられた.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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