1990 年 31 巻 11 号 p. 1334-1342
Wistar系雄性ラットを用いlipopolysaccharide (LPS)によりエンドトキシン血症を作成し,正常肝及び硬変肝におけるフィブロネクチン(FN)投与の効果を生存率,血漿FN,血清GOT, CH50の変動ならびに,肝の組織学的検索にて検討した.生存率はFN投与群が正常肝ラットで5%,硬変肝ラットで1%の危険率をもって有意に高率であった.正常肝及び,硬変肝において,FN投与群はLPS単独投与群に比し,血清GOTの上昇,CH50の低下が軽度であった.組織学的にも正常肝,硬変肝においてFN投与群は肝細胞変性の部分が少なかった.よって,FN投与はオプソエン効果により,肝Kupffer細胞のエンドトキシン貪食能を亢進させ,肝細胞障害や補体の過剰反応を抑制し,生存率の改善に有効であることが示唆された.