肝臓
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原発性肝癌腫瘍マーカーとしてのglutathione S-transferaseの意義
免疫組織化学的検討
伊坪 真理子亀田 治男田中 貢石川 智久
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1990 年 31 巻 12 号 p. 1411-1417

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抄録
肝細胞癌,胆管細胞癌および転移性肝癌において酸性glutathione S-transferase (GST)と塩基性GSTについて免疫組織化学的検索を行なった.その結果,酸性GSTは大多数の胆管細胞癌とくに分化型で陽性所見を得たが,ほとんどの肝細胞癌と半数の転移性肝癌では陽性所見を得なかった.塩基性GSTは過半数の肝細胞癌で陽性であったが,その多くは比較的弱い反応であった.また塩基性GSTは正常肝肝細胞では均一な陽性所見を示すが,前癌病変とも考えられているliver cell dysplasiaで減弱傾向がみられた.以上より,酸性GSTは原発性肝癌のうち胆管細胞癌の良い免疫組織化学的腫瘍マーカーになることが明らかとなった.血清レベルに反映される可能性より臨床経過の指標としての有用性も示唆された.一方塩基性GSTは腫瘍マーカーとしての意義は小さいが,肝細胞癌の前癌病変解析などのマーカーになる可能性が示唆された.
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© 社団法人 日本肝臓学会
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