1991 年 32 巻 7 号 p. 692-699
低アルブミン血症(3.5g/dl以下)を伴う肝硬変症患者5例に,経口BCAA製剤(BCAAとして17.7g/日)を8週間投与し,前後の体内アルブミン代謝動態をkinetic studyを用いて検討した.血漿遊離BCAAとBCAA/AAAモル比は有意に上昇した(P<0.01, P<0.05).血漿アルブミン半減期は有意に短縮し(P<0.01),アルブミン分解率(P<0.05),アルブミン合成量(P<0.01)は有意に増加し,いずれも正常対照に近づいた.体重,循環血漿量,血漿アルブミン濃度,血管内アルブミンプール,体内総アルブミンプールは不変であった.体内アルブミン分布では,血管外プールから,血管内プールへの移動を認め,正常対照の分布に近づいた.以上より,肝硬変症患者に対するBCAA経口投与は,血漿アルブミン濃度の上昇が認められない時期においても,すでにアルブミン合成を促進しアルブミン代謝動態の改善を示し,蛋白栄養状態の改善に有用であると考えられた.