1992 年 33 巻 1 号 p. 54-59
門脈一次分枝に腫瘍塞栓(Vp3)を伴う稀な増殖様式を示した塊状型の胆管細胞癌を切除し,長期生存を得たので報告する.症例は47歳の男性で,主訴は右季肋部痛.超音波検査て肝右葉に巨大な腫瘤を指摘され,1984年10月当科に入院した.腫瘍マーカーはCEA, CA19-9, TPAが高値を示し,肝動脈造影では胆管細胞癌または転移性肝癌を疑う所見であったが,経動脈性門脈造影にて右一次分枝に腫瘍塞栓を認めたため肝細胞癌も考慮され,質的診断に難渋した.同年11月13日拡大肝右葉切除を施行し,門脈内腫瘍塞栓も主腫瘍と一塊にして摘出した.肝切除量は1,760g,腫瘍径は13.5×11.0×8.0cmで,病理組織診断は主腫瘍および門脈内腫瘍塞栓ともに乳頭腺癌であった.術後6年7ヵ月の現在(1991年6月)腫瘍マーカーは正常で,画像診断上も再発の兆なく元気に社会復帰している.