1992 年 33 巻 5 号 p. 375-382
原発性胆汁性肝硬変(PBC)患者において抗糸粒体抗体(AMA)の亜分画であるanti-M2,anti-M4, anti-M8を,anti-M9についてはanti-glycogen phosphorylase antibodyをELISA法にり測定し,臨床像および予後との関連について検討した.対象としたPBC症例100例中,anti-M2陽性は90例で,このうちanti-M4陽性が4例,anti-M8陽性が17例(18.9%)で,anti-M4陽性の4例はいずれもanti-M8陽性であった.anti-M8陽性例は陰性例に比し無症候例から症候例に移行するものが多く,組織学的にはI/II期で小葉間胆管の炎症性破壊像が広範で,胆汁うっ滞が強かった.anti-M4陽性例は高度の肝実質傷害を伴っており,病像も通常のPBCよりは慢性肝炎像を主体としていた.anti-glycogen phosphorylase antibodyは対象100例中60例で陽性で,陽性例は陰性例に比し無症候例が多かった.以上よりAMA亜分画の検討はPBCの診断に有用であるばかりでなく,病態や予後の解明に極めて有用であると思われた.