肝臓
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血小板減少と自己抗体の出現をみた興味あるA型急性肝炎の1例
張 昌徳天野 昌彦坂本 泰三福永 秀行福田 恒夫
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1992 年 33 巻 6 号 p. 473-477

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抄録

血小板減少と自己抗体の出現をみた興味あるA型急性肝炎の1例を経験した.症例は59歳,女性で主訴は発熱と全身倦怠感であった.入院時検査では,高度の肝機能障害と直接型優位の軽度黄疸を認めた.IgM-HA抗体は,cut off値で6.3と陽性を示し,HBs抗原,IgM-HB抗体はともに陰性であったことよりA型急性肝炎と診断した.
さらに,血小板数6.4万/mm3と血小板減少とRA,抗核抗体,LE細胞等の自己抗体の出現を認めた.入院後,自覚症状は約1週間で消失し,肝機能障害は約5週間で正常化した.一方,血小板は6日目には,13.2万/mm3まで回復した.入院後37日目に施行した肝生検では,急性肝炎消褪期の像が得られた.急性ウイルス性肝炎に一過性の血小板減少を伴うことは時にあるが,自己抗体の出現を伴うことは極めてまれと考えられる.血小板減少と自己抗体の出現の機序につき,若干の文献学的考察を加えて報告した.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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