肝臓
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肝細胞癌における癌抑制遺伝子;p53蛋白の臨床病理学的検討-特に増殖能との関係について-
伊藤 隆之城 知宏関 寿人中川 泰一若林 正之塩崎 安子井上 恭一岡村 明治
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キーワード: p53蛋白, 肝細胞癌, 脱分化
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1993 年 34 巻 12 号 p. 989-994

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抄録

肝細胞癌(肝癌)34例を対象に,癌抑制遺伝子であるp53蛋白の異常発現を免疫組織学的に評価し,肝癌におけるp53蛋白異常発現と臨床病理学的意義,さらには増殖能との関連性について検討した.p53蛋白の異常発現は癌細胞の核に一致して認められ,その陽性率は26.5% (9/34)であった.進行度別にみた陽性率では,stage I・II・IIIの肝癌群(13.0%)に比べstage IV-A・IV-Bの進行癌群(54.5%)で有意に高値であった(p<0.05).また分化度別では,高・中分化型肝癌群(16.0%)に比べ低分化型肝癌群(55.6%)で有意に陽性率は高値を示した(p<0.05).さらにPCNA L.I.を指標とした細胞増殖能の検討では,p53蛋白陰性群(32.4±15.3%)に比べ陽性群(52.7±32.4%)でPCNAL.I.は有意に高値であった(p<0.05).以上のことより肝癌におけるp53蛋白の異常発現は,脱分化さらには細胞増殖能に深く関与している可能性が示唆された.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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