肝臓
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肝切除しえた肝原発性悪性リンパ腫の1治験例と17切除症例の文献的考察
金丸 太一宇佐美 真笠原 宏山本 正博
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1993 年 34 巻 2 号 p. 166-171

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抄録

症例は64歳男性,発熱,右季肋部痛を主訴とし画像診断にて肝S8領域に占拠性病変を認め,腫瘍摘出術を施行した.腫瘍は径8×7×6cmで病理検査にて肝原発悪性リンパ腫diffuselarge cell typeの診断を得た.術後VEPA療法を行い,5年経過の現在,再発の徴候はない.
肝原発性悪性リンパ腫は極めて稀な疾患であり,当症例を含め18例の切除報告をみるにすぎない.男女比は14:4,平均年齢は42.2歳であった.術式は肝部分切除3例,区域切除1例,葉切除6例,3葉切除8例であり,化学療法は14例に行われた.Lymphoma Study Group分類では1例を除きdiffuse typeであった.術後の合併症で1例,再発で1例死亡し,予後は良好であった.
本疾患の進展形式はリンパ節転移,周辺臓器への直接浸潤が主であり,肝硬変の合併率も低く,大量肝切除が可能である.他の節外性悪性リンパ腫と同様,逮隔リンパ節転移陽性となる前に手術を行い術後化学療法を併用すれば,予後は充分に期待できると考えられた.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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