肝臓
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肝硬変症における動脈硬化の定量的測定と血清脂質及びアポ蛋白
小坂 和宏大野 俊幸原田 誠河合 文平松尾 厚井上 智雄大西 明弘田中 照二
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1993 年 34 巻 6 号 p. 457-463

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抄録

肝硬変(LC)では動脈硬化の進展が他疾患に比し少ないとされている.当教室の病理解剖例中のLC57名と他疾患患者50名において心筋,腎皮質内の小動脈を用いて定量的に動脈硬化度を算出し,血清脂質を加え,両群で比較検討を行った.次に入院患者で,血清脂質とアポ蛋白を比較検討した.LCでは他疾患患者に比し動脈硬化の程度は肉眼的及び組織学的検討の双方で軽度であった.また.年齢別の硬化度は加齢に従い他疾患患者で増加,LCで低下し明らかな較差が見られた(p<0.05).血清脂質ではT. Cho.とHDLの有意な低下がみられたがLDLには有意差を認めなかった,アポ蛋白は総じてLCで有意な低下を示したがアポ蛋白A-I/A-II比及びアポ蛋白Eのみは有意に増加した.これより抗動脈硬化作用を持つHDL2が保たれていることが推察された.以上よりLCの動脈硬化の程度は他疾患患者に比べ軽減しており,この機序としてコレステロールの低下及びアポ蛋白Eの増加が考えられた.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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