1994 年 35 巻 4 号 p. 309-313
症例は61歳の男性.黄疸,腹水を主訴に入院.画像診断を含む各種検査上,肝硬変,肝細胞癌が疑われたが,肝不全が塙度であったため対症療法しか行えず約2週間の経過で死亡した.剖検の結果,乙型肝硬変を認め,肝内には多数の腫瘤が見られた.腫瘍は組織学的に粘液産生を認める中分化型管状腺癌であり胆管細胞癌と診断された.また胆嚢内および総胆管内にビリルビン系結石を認めた.肝硬変に伴う原発性肝癌は,一般に肝細胞癌が多く胆管細胞癌は極めて稀であるといわれていゐ.本例はHCV抗体陽性の肝硬変であったが胆道結石も伴っており胆管細胞癌の成因を考える上で,示唆に富む症例と考えられた.