36 巻 (1995) 8 号 p. 477-484
インターロイキン(IL2)は末梢血リンパ球の抗腫瘍活性化に重要なサイトカインであり,その作用はリンパ球表面上のα,β,γ鎖の3量体からなるIL2レセプター(IL2R)との結合によって惹起される.われわれは肝細胞癌合併の肝硬変患者28例にTAEを施行して,細胞内部へのシグナル伝達機能を有するβ鎖の末梢血リンパ球上の発現の変動を観察した.TAE前および1,2,3週後の末梢血をモノクローナル抗体で染色後フローサイトメーターで測定した.(1)β鎖陽性(β+)リンパ球数と,β+リンパ球の全リンパ球に対する比率はTAE後3週間はTAE前に比べ有意に低下した.(2)β+CD3+リンパ球のCD3+リンパ球に対する比率と,β+CD3-リンパ球のCD3-リンパ球に対する比率もTAE後3週間はTAE前に比べ低下した.(1)よりリンパ球上のβ鎖の発現はTAEによって抑制を受けており,TAEは宿主の抗腫瘍免疫能に不利に作用すると考えられる.(2)よりβ鎖発現の抑制を受けたリンパ球はT細胞(CD3+)とNK細胞(CD3-)であり,その抑制の原因としてはTAEによる肝類洞の胸腺外分化機構の障害が示唆された.