肝臓
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肝細胞癌が疑われた陳旧性肝内血腫の1例
永井 一毅住野 泰清石井 耕司岡島 存男羽鳥 知樹杉本 元信野中 博子山室 渡吉井 宏
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1995 年 36 巻 8 号 p. 496-500

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抄録

症例は1985年交通事故で肝破裂をきたし,輸血の既往をもつ32歳の男性.1993年3月,再び交通事故で顔面骨を骨折し当院耳鼻科に入院,肝障害および肝内腫瘤が認められ当科に精査を依頼された.GOT 70IU/l, GPT 94IU/lと軽度上昇,第二世代HCV抗体,HCV-RNAともに陽性,AFPは陰性であった.肝内腫瘤は直径約20mmで,超音波検査では高エコー腫瘤,腹部CTでは低吸収域として描出され,腹部血管撮影では異常所見を示さなかった.肝細胞癌に特徴的ではなかったものの,それを否定することもできず,超音波ガイド下狙撃生検を施行した.腫瘤内部からヘモジデリンの集塊が得られ,辺縁部にも癌細胞が認められず,陳旧性肝内血腫と診断した.本例はC型肝硬変であり,受傷後8年間にわたり肝内血腫が残存していた稀な症例である.陳旧性肝内血腫の診断は既往歴の聴取により推測可能であるが,画像診断では,肝癌と鑑別すべき疾患の一つに加える必要がある.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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