1997 年 38 巻 12 号 p. 718-724
肝内門脈瘤の一例を経験した. 症例は53歳, 女性. C型肝硬変に伴う食道静脈瘤の加療のため当院に入院となった. 腹部超音波検査にて, 門脈臍部に直径24×26mm, 上内側区域枝に10×8mmの門脈と連続性を持つcystic lesionが描出され, カラードプラー検査で内部に血液の渦流を確認, 肝内門脈瘤と診断した.
本例は手術や外傷の既往がなく, また門脈圧亢進を合併しているにもかかわらず門脈瘤の大きさは他院での1年前の超音波所見と比較して変化がなかった. このことから後天的成因は否定的であり, また門脈圧亢進が直接成因になるとも考えにくく, 先天的成因の可能性が高いと考えられた. 門脈臍部に発生した門脈瘤は稀で, さらに門脈圧亢進を合併したものは本邦では過去に1例の報告をみるのみである.