1997 年 38 巻 4 号 p. 220-224
近年, 肝性脳症患者の血中に増加したベンゾジアゼピン様物質が, 肝性脳症の一因をなすという報告がある. また, 国外では肝性脳症に対しベンゾジアゼピン拮抗薬が投与され, さらにdouble blind studyで評価がなされている.
アルコール性肝硬変に伴う肝性脳症10例に対し, ベンゾジアゼピン拮抗薬であるフルマゼニルを単回投与し, 前後での意識レベルと脳波を検討し, その有用性を検討した. 意識レベルの変化では10例中6例 (60%) に改善を認めた. 6例中2例は改善後再悪化なく, 残り4例は30分から2時間の一時的な改善にとどまった. 脳波の改善は, 10例中6例 (60%) に認めた. フルマゼニルの投与は基礎にある肝障害の根本的治療ではないが, 肝性脳症の治療の一つとして, 評緬できるものと考える.