肝臓
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一般肝機能検査異常が出現する前に肝生検組織を観察し得た薬物アレルギー性肝炎の1例
阿部 雅則舛本 俊一山本 和寿山下 善正道堯 浩二郎堀池 典生恩地 森一
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1999 年 40 巻 6 号 p. 342-345

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抄録

一般肝機能検査異常が出現する前に肝生検組織を得ることのできた薬物アレルギー性肝炎の1例を経験したので報告する. 症例は68歳, 男性. 一過性脳虚血発作の診断にて入院中に, カルバマゼピン投与を開始した. 腹部超音波検査にて肝内結節性病変を認め, 肝生検を施行した. 肝生検時は, 肝機能検査は全て正常範囲内であった. 結節部は限局性脂肪沈着と診断した. 非結節部は肝細胞のballooningと門脈域にリンパ球を主体とした炎症浸潤を認めた. 肝生検2日後よりトランスアミナーゼと胆道系酵素の上昇が出現し, 内服薬を中止したところ24日目に正常化した. リンパ球幼若化試験でカルバマゼピンが陽性で, カルバマゼピンによる薬物アレルギー性肝炎と診断した. このような薬物アレルギー性肝炎のごく初期像をとらえた報告はなく, 示唆に富む症例と考えられた.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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