肝臓
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健常成人に発症した, 自覚症状に乏しい直径9cmの肝膿瘍の1例
金丸 千穂橋本 直明鈴木 丈夫松浦 広関川 憲一郎松川 雅也高倉 裕一是永 建夫岸田 由起子山崎 一人薬丸 一洋
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キーワード: 発熱, 肝膿瘍, 炎症性偽腫瘍
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2001 年 42 巻 12 号 p. 669-675

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抄録

発熱は細菌感染症である化膿性肝膿瘍の特徴的症候である. われわれは, 健常成人に発症し, 軽微な右上腹痛のみで発熱等の症状を欠く, 肝膿瘍症例を経験した. 患者は入院1カ月前の人間ドックでは炎症所見なく, 指摘されたγ-GPTのわずかな上昇の精査のため, CTを施行されて偶然直径9cmの肝腫瘤性病変を発見された. 入院時, 白血球数とその分画に異常なく, 著明な血沈亢進とCRP上昇を認めた. 超音波ではS7, 8に境界不明瞭な低エコー領域を認め, 内部に散在する数個の小嚢胞様低エコー領域から採取された微量の膿汁から, Klebsiella pneumoniae が検出された. 肝生検の結果は好中球塊を認める肝組織片で, MRI, Gaシンチ所見と併せて, 比較的早期に発見された肝膿瘍と診断した. 抗生物質で治癒したが, 回復期のCT, 肝組織像は炎症性偽腫瘍との鑑別を要した.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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