肝臓
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腸チフスによる敗血症を併発したE型急性肝炎重症型の1例
三浦 英明古橋 修介山田 春木
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2001 年 42 巻 3 号 p. 133-137

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抄録

症例は22歳, 男性. 2000年2月から3月にかけてインド, ネパールに旅行した. 帰国後, 全身倦怠感を主訴に他医受診したところ肝障害を指摘され, プロトロンビン時間 (PT) 40%が判明したため, 劇症化が懸念され当院に転院となった. 転院後もトランスアミナーゼは上昇傾向で腹水も増悪, PTが40%以下となったためステロイドパルス療法を開始した. トランスアミナーゼは下降傾向となったが, PT<40%が遷延し, 脳圧亢進症状が出現したため人工肝補助療法を施行した. 同治療により全身状態は急速に改善し, 肝機能も速やかに改善した. 経過中の発熱時の血液培養から腸チフス菌が検出された. 流行地においては, E型急性肝炎の重症化はまれではなく, 劇症肝炎の原因として頻度が高い. しかしながら本邦においてはE型急性肝炎の劇症化あるいは重症化の報告はいまのところない. 本症例は急性肝炎重症型と診断されるが, 肝炎の極期に腸チフスによる敗血症を併発していたことが病態を複雑にし, 重症化の原因となっていた可能性も示唆された.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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