肝臓
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投与中止により門脈圧亢進所見が改善したメトトレキサートによる肝線維症の1例
今尾 泰之佐藤 悦久川村 直弘浅葉 宣之根津 佐江子山口 康晴徳植 秀樹中島 洋石田 均高橋 信一
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2003 年 44 巻 11 号 p. 586-592

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抄録

症例は57歳, 女性. 慢性関節リウマチ (RA) に対し, 1990年11月よりメトトレキサート (MTX)5mg/週の内服加療を受けていた. 1991年頃より肝障害が出現し, MTXの減量にて経過観察されたが, 2000年5月肝脾腫, 食道静脈瘤を認めたため当科第1回入院となった. 腹腔鏡検査では, 肝表面は中等度の凹凸不整を呈し, 肝生検組織では, 門脈域の線維性拡大と架橋形成を認めた. MTX投与を中止し, 約1年後の2001年11月第2回入院, 食道静脈瘤は消失し, 脾腫も明らかに軽減した. 腹腔鏡検査では, 肝表面の不整は改善傾向が見られ, 肝生検組織では, 門脈域の線維成分は狭小化していた. 本症例では薬剤中止によって肝組織の線維成分の減少とともに門脈圧亢進症所見の改善を経時的に観察することができた. MTX長期投与例の経過観察では, 定期的な検査, 要すれば肝生検を行い, 重篤な合併症に対して早期に対応することが重要と考えられた.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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