2025 年 25 巻 1 号 p. 76-83
本研究は、同一空間内におけるクローン顔が引き起こすクローン減価効果に着目し、顔の向き(正立・倒立)がこの効果に与える影響を検討した。143名の大学生を対象に、クローン顔、非クローン顔、単独顔の3条件の画像を正立および倒立状態で提示し、不気味さ、あり得なさ、快—不快について7件法で評価を求めた。その結果、クローン顔は他の条件に比べて顕著に不気味さや快—不快が高く、クローン減価効果が確認された。倒立提示においても同様の効果が観察され、正立提示との有意差は認められなかった。一方、不気味さ評価においては倒立顔が正立顔を上回った。これらの知見は、クローン減価効果が顔認識の全体処理に依拠する可能性を示しつつも、倒立提示における全体処理の完全な阻害が生じないことを示唆する。本研究は、生成AIの普及に伴うクローン顔の利用において、受容性を向上させるデザインの実現に向けた理論的基盤の構築に資する知見を提供するものである。