一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
(一社)日本家政学会第55回大会
会議情報
アメリカ家政学史研究の新段階と『家政学再考』
~ヴァージニア・B・ヴィンセンティの役割~
*倉元 綾子
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 62

詳細
抄録

【目的】1993年アメリカ家政学はアリゾナ州スコッツデイルで「21世紀にむけての専門職の位置づけ」会議を開いた。会議は,家政学の目的,焦点,活動様式をあらわすような新しい概念枠組みを発展させるとともに,名称を家族・消費者科学とすることを検討するよう勧告した。会議ではまた,『家政学再考-アメリカ合衆国における女性と専門職の歴史-(倉元綾子監訳,近代文芸社,2002)』の概要が紹介された。その後,出版された『家政学再考』は「一連の重要な歴史的できごとについての決定的な研究」(スクラー)という高い評価を受けている。本報告では,アメリカ家政学史研究の新段階とヴィンセンティの役割について検討した。【方法】『家政学再考』,『家政学 未来への挑戦-全米スコッツデイル会議におけるホーム・エコノミストの選択』(日本家政学会家政学原論部会翻訳・監修,建帛社,2002),ヴィンセンティの論文を調査した。【結果】(1)アメリカ家政学における歴史研究は『家政学再考』によって新しい段階に入った。その特徴は,家政学をジェンダー,階級,人種,政治などの社会的文脈に位置づけて検討したこと,女性学・歴史学などの他分野との協同によって詳細で深く広がりをもったケース・スタディが行われたこと,家政学関連の新しい資料が発掘され使用されたことである。(2)ヴィンセンティはアメリカ家政学史研究の新段階に大きく貢献した。彼女は1981年の学位論文“A History of the Philosophy of Home Economics”ですでに新しい研究枠組みの基本部分を提示し,その後それらを進展させてきた。

著者関連情報
© 2003 一般社団法人 日本家政学会
前の記事 次の記事
feedback
Top