p. 83
《目的》酵素処理がセルロース繊維の物性に及ぼす影響は広く研究されているが、汚染性や洗浄性への影響についてはあまり報告されていない。ここでは、セルラーゼ処理綿布および未処理綿布について、混合汚れおよび固体粒子汚れの付着性と洗濯による除去性を比較検討した。《方法》(1)セルラーゼ処理:pH5の緩衝液に市販セルラーゼ(ナガセケムテックスセルライザー)を0~2g/l添加し、50℃で15~120分振盪した。(2)汚染:混合汚れによる汚染は、JIS C9606の湿式人工汚染布作成法により行った。酸化鉄による汚染は、酸化鉄を分散させた40℃の汚染浴中で30分振盪することにより行った。(3)洗浄:洗浄試験機(東洋精機スクラボメータ)により、40℃で30分行った。(4)汚染性・洗浄性の評価:分光測色計(ミノルタCM-2002)により試料布の反射率を測定してK/S値を求め、汚染度、洗浄効率を算出した。(5)減量率:セルラーゼ処理布、未処理布の絶乾重量より求めた。《結果》(1)汚染性:混合汚れによる汚染度は未処理布に比べてセルラーゼ処理布の方が低く、酸化鉄汚れによる汚染度は逆にセルラーゼ処理布の方が高くなった。処理布の減量率の差は汚染性に反映されなかった。(2)洗浄性:セルラーゼ処理布と未処理布について、反射率の等しい酸化鉄汚染布を作成し洗浄したところ、いずれの洗剤を用いた場合でもセルラーゼ処理布の方が低い洗浄効率を示した。