【目的】離水は高分子が形成するゲルや固体粒子溶液の凝集により起こる。澱粉糊液の場合,加熱時に澱粉粒子から溶出したアミロースやアミロペクチン鎖が冷却時に再配列するため離水が起こる。これは澱粉の老化として知られているが,澱粉製品には一般的に好ましい現象ではない。本研究では,澱粉の中でも離水の起こりやすいコーンスターチを用いて,代表的な調味料のショ糖と食塩が澱粉の離水に対して抑制効果を持つか検討した。
【方法】3.0 wt%の澱粉にショ糖(0-50 wt%)または食塩(0-25 wt%)を添加した分散液を加熱・冷却後,1-45日間5℃で保存したものを試料とした。調味料を添加していない澱粉と水のみで調製した試料をコントロールとした。離水測定には遠心分離による方法を用い,上澄み液の重量を全試料重量で除して,離水率を求めた。
【結果】ショ糖を添加した試料において,14日以内の短期保存後では10-20wt%ショ糖を添加した試料では澱粉粒子の膨潤が促進されるため,離水率はコントロールよりも小さくなった。高濃度の食塩(5wt%以上)を添加した試料では,全保存期間を通して,離水率は大きく減少した。25wt%の食塩を添加した試料では離水はほとんど起こらなかった。これは溶出したアミロースやアミロペクチン鎖の数が多いために,新たな網目構造を多く形成し,その中に水を取り込んだためと考えられる。