一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
57回大会(2005年)
セッションID: 2Ea-3
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さばなれずしの製造工程中における成分変化
*久保 加織平谷 綾希子堀越 昌子
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抄録

【目的】 滋賀県や福井県のさば街道筋で漬けられているさばなれずしの熟成過程中の成分変化を調べ、熟成中に付与される栄養価や嗜好性について検討した。
【方法】 大津市内で購入した塩さばを飯漬けし、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月後の水分、灰分、脂質の含量、および塩分濃度、pHを常法どおり測定した。核酸関連物質は液体クロマトグラフィーにより定量し、脂肪酸組成はガスクロマトグラフィーにより分析した。揮発成分はSPMEファイバーに吸着させ、直ちにGCMSに導入することにより分析した。
【結果】 塩さばを飯漬けすることなく保存するとIPAの減少がみられたが、さばなれずしの脂肪酸組成は熟成6ヶ月間でほとんど変化しなかった。n-3系多価不飽和脂肪酸を多く含むさばの栄養価に変化がないだけでなく、飯にさばの脂質が移行したことによる脂質面での栄養的価値が付加されていた。カルシウムは飯漬け期間が長くなるにつれて可食部に移行し、さばなれずしはカルシウムの供給源としても有効であると考えられた。さらに脂質同様、カルシウムでも飯への移行が認められた。その他の成分は飯漬け1ヶ月の間に大きな変動を示し、その後の変化は小さかった。すなわち、IMPは飯漬け1ヶ月の間にほとんどが消失し、HxRやHx含量の最大値は1ヶ月後にみられた。pHの低下も1ヶ月の間で起こり、その後はほぼ一定であった。揮発成分は、飯漬け1ヶ月後で新たに37種の成分が検出され、その中にはふなずしの主要揮発成分と共通するなれずしに特徴的であると考えられるエステル類や、酸類、アルコール類が多く含まれていた。その後も飯漬け期間が長くなるにつれて新たな揮発成分が検出されたが、微量成分が多く、なれずしの風味を複雑にする成分ではないかと考えられた。

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