【目的】大豆イソフラボンは、更年期障害の軽減、骨粗鬆症や循環器疾患の予防などが期待されている。大豆イソフラボンは豆腐、納豆などの大豆加工食品には主に配糖体として存在するが、配糖体のままでは吸収されにくいといわれている。そこで大豆の配糖体型イソフラボンをアグリコン型に容易に変換する方法の開発が望まれる。本研究は、食品加工用耐酸性プロテアーゼ製剤モルシン(キッコーマン株式会社)がβ-グルコシダーゼ活性を有することを見出し、これを用いてきな粉中の配糖体型イソフラボンのアグリコン型への変換を試みた。
【方法】きな粉50mgにきな粉の1%のモルシン、50mMグリシン-塩酸緩衝液(pH3.0)500μlを加え、37℃で2時間反応させた。これを90%メタノール/0.5%酢酸でイソフラボンを抽出し、HPLCシステムを用いた逆相クロマトグラフィー{シリカゲルカラムTSXgel ODS-80Ts QA(東ソー株式会社)}によりイソフラボン量を測定した。
【結果】モルシンを作用させるとダイジン配糖体(ダイジン、アセチルダイジン、マロニルダイジンの合計)は50%減少し、ゲニスチン配糖体(ゲニスチン、アセチルゲニスチン、マロニルゲニスチンの合計)は37%減少した。アグリコン型を測定したところ、ダイゼインはモルシンを作用させた前後で0.08mg/g(dry matter)から0.39mg/gに増加した。またゲニステインは0.09mg/g(dry matter)から0.38mg/gであった。きな粉にモルシンを作用させると、配糖体型イソフラボンがアグリコン型に効率良く変換されることがわかった。