一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
57回大会(2005年)
セッションID: 2Ga-8
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高齢化に伴う過疎山村の住生活と住文化の変容に関する地域特性研究(第四報)
*米村 敦子千森 督子
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抄録

目的:急速な高齢化が進む過疎山村の住まいと住生活の実態及び長年培われてきた住文化の現状と変容の地域特性について、九州山地と紀伊山地の山村集落調査を通して考察し、風土に根ざした住環境の整備と住文化の保全について検討する。方法:住宅実測調査・住まい方調査・アンケート調査の3手法により、九州地区では宮崎県東臼杵郡西郷村(高齢化率33.7%、平成10年国勢調査)の山瀬集落、同郡南郷村(同32.6%)の水清谷集落、児湯郡西米良村(同34.8%)に点在する作小屋の実態調査を実施した(平成11年_から_13年)。本報では南郷村水清谷集落と西米良村の作小屋について報告する。結果:水清谷集落は約150戸の山間の段状集落で、幾段もの棚田群と築100年を越える伝統的住まいを有す。伝統的間取りは、ドジ(土間)に併列してダイドコ(居間。奥に老人室のナンドを区切る)、2列目にオモテ(神棚・仏壇・床を有す)と一間幅のシタノマ(若夫婦の間、出産の場)があり、オモテとシタノマが原型に近い形で残っている。漆喰壁には各戸に独特なコテ絵が施されるが、価値意識は低く、保全が急がれる。水清谷神社を中心に季節の伝統行事も残され、地域への愛着やコミュニティーも濃密であるが、若者の就業や高齢化問題、医療施設に不安感が強い。西米良村の作小屋は山腹の生産のための住まいで、冬場以外は平地の本家を離れてここで生活し、隠居家や産屋ともなり、山の暮らしの伝統を色濃く残している。間取りは元来、ドジとウチネ1室からなり、ウチネは庭側をシタハラ、棚側をウワデと呼ぶ。後年ウチネの横にデノホが併設される。住まいの原型と併列的発展、特有の一間幅のシタノマの成立を示している。現在も常住型が2棟、通所型が10棟ほど住まれているが、猿と鹿の被害が甚大である。

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© 2005 一般社団法人 日本家政学会
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