一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
57回大会(2005年)
セッションID: 2Ja-1
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明治初期の翻訳家政書と明治中・後期の「家事」教科書との比較研究
*八幡(谷口) 彩子
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抄録

目的 筆者はこれまでに,家政学の成立過程に関する研究の一環として,明治初期に刊行された翻訳家政書の原典解明と19世紀中葉における英米の家政教育との関係の検討,明治10年代に刊行された「家事経済」教科書との比較研究を行ってきた.本研究では,明治初期の翻訳家政書と明治中・後期に刊行された高等女学校等「家事」教科書との比較のもと,翻訳家政書によって日本に移入された英米の家政理念や内容が,明治中・後期の「家事」教科書にどのような影響を及ぼしたのかについて検討することを目的とする.
 方法 明治初期の代表的な翻訳家政書7種類と,明治中期の家政関係書8種類,明治後期の高等女学校等「家事」教科書5種類を資料とし,家政に関する語彙,刊行の意図,家政目標などの家政理念,扱われる内容と範囲,などの観点から比較検討を行った.
 結果 1)明治中期から後期に至って,英米の家政書や翻訳家政書の直接的な影響が強いものから,日本独自の家事教育の内容を意識したものへと変化がみられる.2)「家事」教科書で扱われる内容や領域は,家庭生活全般に及ぶ広範囲なものとなっており,衣食住や経済などとあわせて,看護,衛生,育児などの比重が高まっている.3)女子における家政に関する教育の重要性が認識され,自然科学的記述も平易な形で採用された.4)このように,明治初期の翻訳家政書と明治10年代の「家事経済」教科書との間にみられた断絶面が,明治後期の高等女学校等「家事」教科書では再び復活している.

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© 2005 一般社団法人 日本家政学会
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