一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
57回大会(2005年)
セッションID: 1P-51
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プレ子育て支援としての家庭科「保育」教育構想:
-課題検討を中心に-
*北野 幸子
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抄録

目的 少子化の進行、家庭の機能低下、蔓延する子育て不安、増加あるいは顕在化し続ける児童虐待の問題が指摘され続けている。子育て世代を対象とした子育て支援のみではなく、将来の家庭構成者である児童を対象とした家庭科「保育」教育の充実が今後望まれる。しかし、一方で家庭支援のニーズが高まっているにもかかわらず、他方で家庭科の時間数および専門教員の縮減がみられる。ここで、現在の子育て不安の状況と家庭科「保育」教育の内容を照らし合わせ、その意義と課題を再検討することは重要な課題であると考える。方法 まず、(1)各種基礎調査の分析により子育て不安の内容と傾向を明らかにした。次に、(2)現行の高等学校家庭科教科書の「保育」領域の内容を分析した。さらには、(3)両者の比較検討により、その意義と課題を明らかにした。結果 (1)の結果、特に乳幼児期の子育てに関する知識と技術の欠落、子どもの人間関係や社会性の教育への不安、社会資源の活用とネットワークの構築の必要等が、明らかになった。(2)の結果、家庭科「保育」教育では、実習・演習が少なく、その内容も発達に関する知識重視であることが、分かった。(3)の結果、保育技術に関する教育内容、子どもの人間関係形成力や子どもをめぐる環境についての知識、社会的資源の活用方法の教育が必要であることが、明らかになった。以上より、ガイドラインとしての知識と多様な情報を、自らが選択し決断する力の育成が、課題として挙げられた。子育てには唯一の結論はなく、またマニュアルもない。知識や技術を考えて活かす、実習・演習教育の充実が望まれる。

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© 2005 一般社団法人 日本家政学会
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