一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
57回大会(2005年)
セッションID: 2P-5
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葉酸欠乏が血管機能におよぼす影響
*中田 理恵子
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抄録

【目的】葉酸が欠乏すると、ホモシステインからメチオニンへの代謝が阻害されて、血漿ホモシステイン濃度の上昇を引き起こすことが知られている。過剰なホモシステインは、血管内皮に損傷を与えて、動脈硬化などの疾患の一因になることが最近注目されているが、その機構については、十分には明らかにされていない。そこで、葉酸欠乏ラットを用いて、葉酸の欠乏が血管機能にどのような影響を与えるのかを検討した。【方法】離乳直後の3週齢オスラットを2群に分け、各群に葉酸欠乏食(葉酸フリー)または対照食(葉酸 8mg/kg diet)を自由摂取させて、4_から_8週目に血液と血管を採取した。血漿中の葉酸とホモシステイン濃度,血管中のTBARS量とグルタチオン量を定量した。また、血管弛緩・拡張反応や動脈硬化の発症・進展に関与する血漿中の一酸化窒素(NO)量を定量した。さらに、血管内皮型NO合成酵素(eNOS)のタンパク質量をウエスタンブロティング法により定量した。【結果】血漿ホモシステイン濃度は、血漿葉酸濃度の減少に伴い、欠乏開始4週目から急激に増加した。血管のTBARS量は、欠乏6週目から増加する傾向にあった。一方、血管のグルタチオン量は、6週目から有意に低値を示した。さらに、血漿のNO量は欠乏群で6週目から対照群に対し有意に減少し、eNOSタンパク質量も減少していた。以上より、葉酸の欠乏によって血漿中で上昇したホモシステインが、血管に酸化ストレスを与えることによって血管内皮の機能障害を誘導し、抗動脈硬化因子の1つと考えられているNO産生の抑制を引き起こすことが明らかとなった。

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