一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
58回大会(2006年)
セッションID: 1P-1
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ポスター発表
タイ北部のカノムタイ(タイ伝統菓子)と人々の生活_-_その機能と構造
*宇都宮 由佳益本 仁雄スィワナーソン パタニ
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抄録

背景・目的 タイ伝統菓子「カノムタイ」は,現地の人々によって作られ,仏日や祭りの際に僧侶や寺へ寄進されている.また市場や商店でも日常的に販売され摂取されている.しかし,経済化,情報化が進行し,諸外国ならびに首都・中央部の文化の強い影響の下,食も含めた地方固有の伝統文化を維持・継承していくことは,当該地域に限らず発展途上国に共通した取組むべき課題となっている.本研究では,タイ王国の古都チェンマイにおいて,都市,農村,山村の児童生徒及び住民や家政学研究者等に対して,家庭でカノムタイを作る状況,伝統行事との関係などに関し,質問紙及び面接聞取り調査を実施し,タイ北部の人々にとっての伝統菓子の意義や役割について計量的に明らかにしていく.
結果・考察 カノムタイは,タイ北部で仏教,農業関連の伝統行事や結婚式,新築祝いの際に76%の家庭で作られていた.材料はモチ米,ウルチ米粉が主体で,タイ中央部に比べ,砂糖やココナッツミクルクは少量で,結婚式など特別な菓子はなく,味・形状,名称ともに簡素である.カノムタイには,1.腹持ちがよい,2.家族・親戚で一緒に作り,互いの絆を強める,3.寺や僧侶に寄進することで功徳を積むことができる,4.アイデンティティーを醸成する身近な対象物である,などの特徴が認められた.また近年,学校教育や地域社会における伝統復活,維持・継承の動きもあり,特に都市ではカノムタイ選好と「家で作ること」「仏日に寺へ行くこと」とに関連あり,伝統文化回帰の傾向がみられた.それらがカノムタイに対する根強い支持につながっていると推察された.

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© 2006 一般社団法人 日本家政学会
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