一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
58回大会(2006年)
セッションID: 1P-28
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ポスター発表
食用油脂の熱分解挙動と分解生成物の組成分析
*中村 和吉萬羽 郁子五十嵐 由利子
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キーワード: 食用油脂, 熱分析, 香気
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抄録

【目的】揚げ物調理など食用油脂を多量に使用した際に発生する香気や臭気と呼ばれる気相成分は、油脂(トリグリセリド)を構成する長鎖脂肪酸が酸化分解した低分子量アルデヒド類を主にしているのは知られている。しかし、これらの成分生成について系統的な調査報告は少ない。本研究では食用油脂のキャノーラ油、ラードを用い、加熱調理を模した熱分解過程での気相成分生成について、熱天秤/示差熱分析(TG/DTA)とガスクロマトグラフ/質量分析(GC/MS)を組み合わせた分析手法により知見を得たので報告する。
【方法】気相成分の分離・同定はリガク社製TG/DTA-GC/MS(QP-5050A)を用いた。本装置はTG/DTAとGC/MSを連結しており、試料の昇温過程で生じる熱分解や燃焼等による質量変化・熱エネルギー変化、その際に生成する気相成分の組成分析および分子構造が求められる。油脂試料は市販品を用い、測定時の試料雰囲気は擬似大気(He/O2(80/20=v/v))とした。
【結果】TGより、キャノーラ油では3種(290, 420(主), 520℃)の温度範囲で気体生成に伴う減量を生じ、750℃において全量が分解して気体へと変化した。ラードでは脂質分子内での飽和脂肪酸割合が多いため変化温度が(310, 420(主), 520℃)と一部高くなるものの、同様の変化を示した。これらの生成気体をMS分析したところ、水とCO2が大部分を占めており、油脂と酸素が燃焼していることがわかった。これはDTA測定で同温度にて高発熱量の反応を示す結果を得たことからも明らかである。また、180_から_350℃の領域では、水、CO2と比較すれば少量ではあるが長鎖脂肪酸、アルケン類、油脂構成脂肪酸に対応した低分子量飽和(or 不飽和)アルデヒド類が生成していることがGC/MS分析からわかった。

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© 2006 一般社団法人 日本家政学会
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