一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
59回大会(2007年)
セッションID: P-25
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酸化羊毛のアンモニアに対する収着性
繰り返し使用における放置と水洗の効果
*小原 奈津子金井 まゆみ
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抄録

目的 これまで羊毛繊維に特定の機能を付与することを目的として,いくつかの比較的簡便な化学的処理を検討してきた。先の研究では,羊毛を過ギ酸で酸化して得られた酸化羊毛がアンモニアを極めて速やかに吸収する性能があることを見出した。
方法 酸化:0℃のギ酸と過酸化水素水の混合溶液中(容積比9:1)に羊毛繊維(浴比1:30)を浸漬し,20分間攪拌した。消臭性の評価:窒素置換した後,34μLの28%アンモニア水および内部基準として17μLのエーテルを注入した500mLの三角フラスコに0.5gの羊毛試料を入れ,フラスコ内のアンモニア濃度の経時変化をガスクロマトグラフで4時間追跡した。この時のアンモニアの初期濃度は約13400ppmである。
結果 未処理羊毛の場合,フラスコ内のアンモニア濃度は初期の約60%に減少したが,同じ試料で同様の測定を繰り返すと,収着性は徐々に減少し,6回目は,測定4時間後で初濃度の80%のアンモニアが残存していた。同試料を2ヶ月間放置すると,測定4時間後のアンモニアは初濃度の74%であり,収着性はやや回復した。酸化羊毛の場合,1回目の測定では30分でアンモニアは検出されなくなり,極めて高い収着性能を示した。しかし同じ試料で測定を5回繰り返すと未処理羊毛と1回目の測定と同程度の収着量となり,その収着能は低下した。この試料を9ヶ月放置するとその性能はかなり回復し,2時間後アンモニアの残存量は初濃度の2.5%に減少した。さらに5回繰り返し測定後にイオン交換水で洗浄したところアンモニア収着性は再び回復した。これらの結果から,アンモニアの羊毛への収着はイオン結合ほど安定なものではないことが推測された。

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© 2007 一般社団法人 日本家政学会
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