一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
60回大会(2008年)
セッションID: 2B2
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2日目口頭発表
包丁研ぎの動作の解析
飯 聡西村 由二三*白土 男女幸久米 雅田中 辰憲濱田 明美仲井 朝美芳田 哲也
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抄録

目的日本料理は,多種多様な食材を器に美しく盛りつけるために,切り型や形など,特に美しく切ることを重視してきた.そのため,刃の薄い片刃包丁を使用するが,この形状のものは世界に例をみない.片刃包丁は,その切れ味を保つために常に手入れをして研ぎ澄まさなくてはならず,日本料理の職人にとって,包丁を上手に研ぐことは,大変重要な修練の一つである.そこで本研究は,職人の経験や勘(暗黙知)で研いでいた包丁研ぎの動作を形式知化し,後継者育成や教育現場の支援と,その技術を現在のものづくりへ活用することを目的とした.
方法料理歴30年と19年の日本料理職人2名を被験者(熟練者)とし,片刃鎌型薄刃包丁を用いて,包丁研ぎを行った.被験者の身体上の19点に赤外線反射マーカーを貼付し,3次元動作計測装置にて得られたデータから包丁研ぎ動作を分析し,同時に上肢における筋電図計測を行った.また,研ぎあがった包丁の刃先を光学顕微鏡で観察した.
結果熟練者2名とも1ストローク(包丁を前方向に押し,再び引き戻すまで)の動作時間および動作範囲が安定しており,高い再現性が確認された.筋活動では,尺側手根屈筋(包丁を押さえる筋肉)と三角筋(腕を後方に引く)の筋活動が顕著に認められた.また,上肢の動作だけではなく,下半身もリズミカルに連動させて動作を行っていた.さらに,2名の間で,研磨時間と筋活動に差が認められた.1ストロークにおける筋活動量と研磨時間をあわせて考えると,1名は小さな力で長時間,もう1名は力をいれて短時間で仕上げていた.研ぎあがった包丁の刃先の観察では,刃の先端部と中央部において凹凸が認められた.

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© 2008 一般社団法人 日本家政学会
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