一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
60回大会(2008年)
セッションID: 3D1
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3日目口頭発表
17世紀後半の英国における女性の乗馬服着用の流行
*松尾 量子
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抄録

16世紀の後半から女性は、乗馬の際に、ダブレットや羽根飾りのついた帽子など男性の服飾に由来する服飾アイテムを着用していた。16世紀末のエリザベス一世の衣裳に関する記録には、乗馬用衣服という項目が見られる。1660年代になると、王妃を中心とする宮廷の女性たちの間で、乗馬用衣服を着用するという流行が見られるようになる。本発表では、サミュエル・ピープスやジョン・イーヴリンの日記をはじめとする当時の記述を主な資料として検討を行い、1660年代を中心に17世紀後半の英国に見られる女性の乗馬用衣服着用の流行についての報告を行う。 サミュエル・ピープスは、1666年6月の日記において、王妃の侍女たちが乗馬服を着ている様子を記しており、男性との違いはスカートが着用されているか否かであると述べている。ピープスと同時代のジョン・イーヴリンは、1666年9月の日記に王妃の装いとして、乗馬服(riding-habit)という言葉を使用しており、帽子と羽根飾り、騎手の上着が流行していたと記述している。オックスフォードの歴史家アンソニー・ウッドは、これらが宮廷からの流行であったことを記述している。紋章官であるランドル・ホームは、1688年に女性用の乗馬服として、フード、キャップ、マント、乗馬用の防護スカート、乗馬用上着を挙げており、特に乗馬用コートについては、男性のジャケットのようであると記している。男性風の乗馬用上着とスカートという組み合わせは、女性の乗馬用衣服として16世紀後半から17世紀を通じて着用されたが、17世紀の後半には、これらのアイテムの組み合わせが乗馬服としての明確に位置づけられていたと考えられる。

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